3rdアルバム『次の迷路へ』
全曲解説(Y・R)

1. 次の迷路へ

オグラお得意の6/8拍子。大海原へ漕ぎ出していくようなダイナミックな楽曲です。幼いころ誰もがワクワクした宝島や海賊たち。冒険物語の本質とは「憧憬」にあります。「海への憧れ」。しかし、大人になり現実にぶつかると、それだけではすまなくなりますね。どっちへ行くか、何を指標にするべきか…。色んな考えを知った分、選択肢も増えますね。右か左か善か悪か、だけでは選べない複雑な現代社会。それでも憧れをたずさえ次の迷路へ。♪探しても、探しても、見つからないものを探しに♪

2. ビル風と17才

トランペットのイントロが爽やかです。どこかの田舎町にいる高校生の歌でしょうか?未熟でちょっとシニカルな17才たち。ビル風に♪僕らをどこかへ吹き飛ばしてくれよ♪と願っています。自分をつきはなす事によって自己救済しようとしているのかもしれません。

3. 心配禁止

オグラにしては珍しいR&R調ナンバーです。先のことばかり考えすぎると不安になってしまいます。そんな時は単純に♪心配禁止♪で行くのもいいかもしれませんね。

4. それゆけ!貧乏紳士

インチキ手廻しオルガンとちんどん太鼓の相性がバッチリな一曲です。転がるようなスピード感の中で♪それゆけ!貧乏紳士たち、いらないものは捨ててゆけ♪と歌われています。いらないものとは自分の中にある「こだわり」ってことにお気づきなのかしら?

5. あなたの暗闇

オグラの基本的音楽スタイル。インチキ手廻しオルガンを廻しながら歌っています。ハンドルを廻す時の「キュルキュル」という音も忠実に録音され、リフにはオモチャの鉄琴が使われています。可愛らしい音色の伴奏ですが、コーラスはいくえにも重ねられ、歌詞には深い思いがつづられています。♪暗闇がなければ光は進めないよ♪

6. 美しき町内

ちんどん太鼓、ゴロス、バンジョー、バイオリンで奏でられる大正的ワルツです。♪僕らは庶民、大衆じゃない♪と歌われるサビ。「大きくくくらないで」といった意味でしょうか?「絵画の本質は額縁にある」という有名な言葉がありますが、どこかで「区切り」をつけて考えなければ物事の本質は見えにくいのかもしれません。あまり遠くの人のことばかり考えていては、肝心の「愛」も際限なく広がり、薄まってしまうのかもしれませんね。

7. かたちたち

部屋に閉じこもっている人の歌かしら?『800ランプ』時代の叙情的クラシカルナンバーの新録音です。♪ハハハハ♪とか、♪へへへへ♪とか、聴いているだけでは(ん?)ですが、歌詞カードを見ると謎がとけますね。楽曲は中盤から徐々に壮大になっていきます。しかし、全楽器のリズムアクセントはひたすら頭打ちをつらぬきます。タイトル「かたちたち」とは「形達」のこと。「リズム」の語源は古代ギリシア語でモノの「形」を表していたとか…。

8. 冬とバケモノ

♪この肺いっぱいに真冬を吸込んで、今夜僕はバケモノになる♪という唐突な歌い出し。面倒な人間関係と自分を脱し、バケモノになった「僕」は宇宙を飛び回ります。なんとも不可思議な童話的楽曲。「宇宙は極めて論理的に出来ている」といわれる宇宙物理学に対して、冬を吸ってバケモノになるなんて実に非論理的。荒唐無稽もいいとこです。しかし、物事を重くとらえていては飛べないのかもしれません。この広大な夜空(宇宙)を見上げてごらんなさい。可能性は無限ですもの!

9. 痛快!ゴールデン世界
オグラ楽曲の中でも異色中の異色。その昔、女性アイドルに売り込もうと作った曲だとか。メロディもアレンジもオグラ感がうすい印象をうけます。深夜のカラオケで歌ってみたくなるような曲でしょうか。歌詞は女性目線で歌われています。過剰な自意識で自分の世界に立てこもってしまう男性諸氏。「俺は俺は」と言いながら、本当は抜け出したいと苦しんでいるのかも。しかし、自分のことばかり考えていたら世界はどんどん狭くなってしまいます。♪自分なんかほったらかして繰り出しましょう、痛快ゴールデン世界♪へ。

10. 夢の中には水がこぼれている

♪明日が、明日も来るとはかぎらない♪という歌詞ではじまるスローなワルツ。この世は「元気で明るいもの」ばかりで成り立っている訳ではありません。病気や怪我で苦しんでいる人、明日をも知れぬ我が身を懸命に生きている人が大勢います。でもこの曲、応援歌ではないようです。美しい現実逃避の中で♪僕らはいつまでも遊んでいよう♪とささやいています。

11. ゆっくりサンシャイン

3コードで作られたシンプルな曲です。♪しとしと雨降り月曜日、宿題忘れた小学生、学校が火事で焼けるのを天に祈ってます♪なんて…月曜から日曜日まで、目立たない人々のいとなみが歌われています。使われた楽器は、ウクレレ、リコーダーの他、木のベッド、台所用品を叩いた音も入っています。